界面活性剤は、スキンケア商品や化粧品だけでなく日々の生活に欠かせない成分です。
界面活性剤と文字だけ見ると危険性の高い成分だと連想してしまう方もいるかもしれませんが、実際のところはどうなのでしょう?
といっても界面活性剤の種類は膨大で、化粧品に使われるもの、工業用に使われるもの、食品に使われるものなど多岐にわたりますので、このサイトでは特にクレンジングに関する部分を取り上げていこうと思います。
このページではクレンジング剤に含まれる界面活性剤の働きや、危険性についてなるべく中立の立場で解説しています。
Contents
界面とは?
界面とは、固体・液体・気体など異なる物質の境目(境界)の事をいいます。もちろん、個体-個体、液体-液体(水と油)の組み合わせでも、界面は存在します。
しかし、気体-気体の組み合わせの場合は混ざり合ってしまうので界面は存在しません。
固体と固体、固体と液体、固体と気体、液体と液体、液体と気体の5つです。
気体は性質が異なっていてもお互いに混じりあうので、気体同士の間では界面は存在しません。
5つのパターンで、どのような界面があるかの具体的な例を見てみましょう。固体と固体 : 携帯電話と指、衣類と付着したヨゴレ
固体と液体 : コップとコーヒー、機械と潤滑油
固体と気体 : 皮膚と空気、地球と大気
液体と液体 : 水と油
液体と気体 : 海水と大気、シャボン玉目に見える界面を紹介しましたが、目に見えない場所にも、無数の界面があります。
例えばリンゴの皮とその内側の果肉、血管と流れている血液、貝の中の真珠などです。このように私たちは無数の界面に囲まれて生活をしています。
日常生活で、界面という単語は聞きなれないと思いますがこちらは技術用語(専門用語)ですね。
界面活性剤とは?
界面活性剤とは、異なる物質の界面に対して機能する物質の総称です。ですので、一口に界面活性剤と言っても、その種類は非常に多いです。
界面活性剤の共通する特徴として、1つの分子内に水になじみやすい部分と、油になじみやすい部分を持っていることが挙げられます。
この水になじみやすい部分を新水基(しんすいき)、油になじみやすい部分を新油基(しんゆき)または疎水基(そすいき)と呼びます。
界面活性剤の働きについて
界面活性剤はいろいろな働きをする物質で、乳化・可溶化・ぬれ・分散・洗浄などの作用があります。また、保湿・殺菌・潤滑・帯電防止・柔軟・気泡・消泡なども含まれます。
界面活性剤は色々な作用が複雑にからみあって有効な働きをするのですが、この中でクレンジング剤に関係の深い作用と言えば乳化・洗浄があげられます。
乳化について
乳化については、良く例に出されるのが水と油です。水と油は通常の状態ではまざりあうことがありません。力いっぱいかき混ぜても、時間がたつとすぐに元の状態、水と油に分離してしまいます。
この水と油に界面活性剤を少し混ぜると、水と油が均一に混ざりあいます。これが乳化といわれる作用です。乳化したものをエマルションと言ったりもします。
マヨネーズは酢(水分)と油に卵黄を混ぜて作りますが、卵黄に含まれるレシチンという天然界面活性剤が作用して酢と油が綺麗に混ざり合っています。
洗浄について
メイクや皮脂などの油汚れは水だけで落とすことはできません。そのため、界面活性剤の力をかりて洗浄という作用で新水基と新油基の働きで汚れを落としていきます。
洗浄の仕組みとしては、まずは界面活性剤の新油基が汚れに吸着し、水の表面張力が弱くなります。汚れを取り込むと、汚れの外側は新水基で覆われます。これにより、新水基で覆われた汚れは水に引き寄せられ、水によって洗い流されます。これをローリングアップ現象といいます。
この他にも、洗顔料などは界面活性剤の気泡・消泡などの作用を使って泡立ちをコントロールすることができます。
界面活性剤の種類について
では、次に界面活性剤の種類について見ていくことにしましょう。
界面活性剤は、用途別・性能別・合成法別・化学構造別などいろいろな分類の仕方があるのですが、一般的には水に溶かした時にイオンに解離するかしないかで分けることができます。
なお、ここはどうしても専門的な表現になってしまいます。興味のない方は読み飛ばしてくださっても構いません。
アニオン界面活性剤
アニオン界面活性剤は水に溶解した時に親水基の部分が陰イオン(
また、
カチオン界面活性剤
カチオン界面活性剤は水に溶解した時に親水基の部分が陽イオン(
カチオン界面活性剤の化粧品の用途としては、
両性界面活性剤
両性界面活性剤は、
特に他のイオン性界面活性剤と比較し皮膚刺激性、
非イオン(ノニオン)界面活性剤
非イオン界面活性剤はイオン性界面活性剤と異なり、
非イオン界面活性剤は分子内の結合の仕方により、エステル型、
その他の界面活性剤
界面活性剤は、アニオン性・カチオン性・両面性・ノニオン性の他に、高分子界面活性剤や天然の界面活性剤もあります。天然の界面活性剤の例としては、レシチン・サポニン・コレステロール・ラノリンなどが挙げられます。
界面活性剤の危険性について
界面活性剤は、その種類ごとに危険性や肌への刺激が異なります。
この界面活性剤の刺激の違いには、イオンの性質や界面活性の力の大小が深くかかわっています。
危険性の高い界面活性剤
危険性の高い界面活性剤としては次のようなものが挙げられます。
- ラウリル硫酸Na
- ラウレス硫酸Na
- オレフィン(C14-16)スルホン酸Na
安全性の高い界面活性剤
比較的安全性の高い界面活性剤としては次のようなものが挙げられます。
- ステアリン酸グリセリル
- ラウリン酸ポリグリセリル-10
- トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル
合成界面活性剤は悪者?
合成界面活性剤や石油系界面活性剤不使用!と謳っている化粧品も多いですが、合成界面活性剤とは一体なんなのでしょうか?
天然界面活性剤は安全だけど、合成界面活性剤は危険だと良く目にしますが果たして本当なんでしょうか?
実はこの合成という言葉の意味の時点で、既に研究者の中でも意見が分かれているんですよね・・
天然物と天然物を組み合わせたらどうなる?
合成界面活性剤の話をしていると、良く話題に上がるのが水添(すいてん)レシチンです。
レシチンとはリン脂質の一種で、卵黄や大豆に含まれる天然界面活性剤です。マヨネーズを作る時に、酢と油に卵黄を混ぜると水分と油が分離せずにクリーム状になりますが、これはレシチンの働きのおかげなんですね。
レシチンは口にしても全く問題ないほど安全性が高いですが、化粧品に使うには劣化しやすいという弱点をもちます。そこで、レシチンの安定性を高めるために、水素を添加してあげるのです。この水素が添加されたレシチンを水添レシチンと呼びます。
この水添レシチンが危険性が高いという研究者は、まずいないと思います。
水添レシチンは天然物?合成物?
で、この水添レシチンは、果たして天然物なのでしょうか?それとも合成物?
レシチンは食材にも含まれる天然物ですし、水素もそこらじゅうに存在している天然物です。天然物と天然物を組み合わせているから、水添レシチンは合成界面活性剤ではないという方も一定数います。
しかし国語辞典によると、合成とは「2つあるいは2つ以上の元素の化合により新物質をつくること」とされています。一般的な解釈ではこの安全な水添レシチンも合成物になるのではないでしょうか?
合成界面活性剤にはこのような例が山のようにあり、合成という言葉だけで判断するのは逆に危険です。
化粧品業界では無添加表記などのこういった紛らわしい例がとても多いですが、合成界面活性剤に関しても同じことが言えます。界面活性剤の中には刺激の強いもの、危険性の高いものもありますが、合成という文字で界面活性剤の危険性を判断するのは間違いです。
界面活性剤でゴキブリを退治できる?
界面活性剤でゴキブリを退治する事はできます。
あんなにしぶといゴキブリを退治できるなんて、やっぱり界面活性剤はとても刺激が強いんじゃないの?と勘ぐってしまいますが、実はこれは肌への刺激の話とは関係ないものです。
ゴキブリの呼吸器(気門)は通常は油で覆われており、水をはじいて侵入させない構造になっています。界面活性剤はこの油分に溶け込むため、気門から気管の中まで侵入します。そのため、ゴキブリは呼吸ができなくなってしまうんですね。
ですので、界面活性剤でなく油分(サラダ油など)をゴキブリにかけても同じ結果になります。界面活性剤の毒性や刺激によってゴキブリが退治できているわけではないんですね。
石鹸も界面活性剤なの?
石鹸と界面活性剤は別物と考えている方もおられますが、石鹸はれっきとした界面活性剤です。
ですので、無添加石鹸なども界面活性剤として扱われますし、界面活性剤不使用の石鹸というのもおかしな話なんですね。
クレンジング剤に使われる界面活性剤の働きについてのまとめ
界面活性剤は現代の暮らしにはなくてはならないものです。
もちろん界面活性剤には肌に刺激の強いものから、ほとんど刺激を与えないものまでさまざまな種類のものがあります。
界面活性剤については複雑な話も多く、様々な意見もあります。これからは本当に共感できるブランドを探し出して購入するのがこれからの化粧品の選び方になるのかもしれませんね。
※参考図書:新化粧品学